【お礼】新年のご挨拶

アカデミーキャンプより、謹んで新春のお慶びを申し上げます。

昨年も当キャンプへのご参加とご支援、誠にありがとうございました。本年も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

「大人がこどもを守るだけではなく、大人とこどもがともに未来を守る時代になった」

これは、テレビアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン」第2話の台詞です。ただ、「テレビアニメ」という呼び方には語弊があるかも知れません。このアニメの主な対象であるこどもたちの多くは、おそらくテレビ放送をその時観たり録画したりするかという意味では、この作品をテレビでは観ていないだろうからです。また、上の台詞は、大人ではなく小学生が (新幹線なので) 運転士としてロボットに乗って戦うことに理由を与えるために編み出された、一種の方便でしょう。ですが今、ロボットに人が乗って操縦するという、昭和47年の「マジンガーZ」以来のロボットアニメ定番の設定自体に、リアリティが失われはじめています。掃除用ロボットや、昨年デモされて話題を呼んだ全自動お片付けロボットシステム、そして実用化が進む自動運転車など、現実のロボットは操縦されるのではなく自律的に動作するからです。「ガンダム」(操縦されるロボットのひとつの到達点) よりも、「ドラえもん」(自律動作するロボットのひとつの到達点) の方がリアルな世界に、私たちの現実はどんどん近づいているかのようです。おそらく、当然のように鉄道などもすべて自動運転化されている未来、人々は「なぜ昔のアニメではロボットに人が乗って操縦していたのか?」と怪訝に思うことでしょう。

一方、「大人とこどもがともに未来を守る」という言葉には、今まさに必要とされるリアリティがあります。未来社会の主人公は、他ならぬ今のこどもたちだからです。技術的・社会的環境がめまぐるしく変わりつつある現代、学校教育に代表されるような、私たち大人がこどもたちに下げ渡す未来は、どう転んでも時代遅れになるでしょう。そんな中で、こどもたちが実際に生きるだろう未来の姿を守るためには、大人とこどもが力を合わせる以外に方法が見当たりません。

そのためには、大人たちが今、未来に向かってもがいているように、こどもたちがもがくことを良しとするのでしょう。例えば、創造的かつ破壊的な仕事をするために「現状から (10% ではなく) 10倍よくするためには?と考えること (10x Goals)」を、こどもたちに投げかけてもよいのかも知れません。

10倍よい未来には、今やっていることの延長では決して到達できません。今やっていることを壊したり、自分がやらずに済ませるようにすることが必要になります。「宿題を自分がやらずに済ませるようにすること」を探求した昨夏のキャンプ「オッケーグーグル、宿題やっといて!」では、そのことを先取りしたと言えるかも知れません。オートメーション (自動化) は、いずれにしても鍵なのでしょう。

オートメーションによって、人間が物事に介入する機会は減るが、いざ介入しなければならない時には (物事がよほどうまく行かなくなっているのだから) より高次・高速な判断が必要になるという「オートメーションのパラドックス」は事実でしょう。だとしたら、人間自身が、その新しい環境に適応して変わっていかなければなりません。その答えの無い新しい未開にこどもたちがチャレンジしていくことを、私たちは妨げてはいけないと思いますし、その邪魔をする足枷 (古い常識・良識) からは、私たち自身が訣別する必要があるでしょう。

平成最後の新年という節目を迎えて、アカデミーキャンプからは次のメッセージを以てこの挨拶を締め括りたいと思います。

今度こそ昭和にさようなら。

10x Goals